子どもとその家族が健やかに
日々の生活を送るお手伝いを
するのが、私の仕事です
大分県佐伯市の離島である大入島出身の私にとって、島唯一の診療所が病気になった時の頼りで、「お医者さん」は憧れであり遠い存在でした。中学生の頃から、リハビリに関心を抱き、理学療法士になるのが目標でしたが、高校1年生の時に、父が病気で他界したのをきっかけに、さらに医療現場への関心が高まり、高校3年生の時に医師になることを決めました。
父を亡くした時の経験から、医療について大事だと思う事があります。病気を患っている人の家族の思いを忘れてはいけないということです。病気を患った方の背景には、家族がいます。病院の中では、患者さんだけれど、家族の中では、父であり、母であり、姉であり弟であり、それぞれに掛け替えのない役割があって、1人欠けるということは家庭にぽっかりと大きな穴ができるようなものです。私には空虚な穴を簡単に埋めることはできませんが、家族の思いに出来る限り耳を傾けることをずっと忘れたくないと思っています。
「子どもを診たい」それが小児科を志した、ただ1つの理由です。あまり、難しいことを考えるのは得意ではありませんし、その思いだけで十分でした。小児科では、他の科以上に、家族の協力が必要です。子どもたちは家族の映し鏡です。両親の様子が明るければ、子どもたちの顔には笑みがあふれます。家族の役割が明確な小児科は、医療を施す中で、協力できる人がたくさんいます。
小さな離島に生まれ、幼き日に遠い存在だと思っていた医師の仕事。正直大変なことも多いです。でも、相手にしているのが子どもたちだからこそ、より一層、頑張りたいと思えます。そんな子どもたちにとって、遠い存在ではなく、身近な医師でありたいと思っています。
今は特に腎疾患の子どもたちを多く見ています。長期に付き合うことが多い分野ですが、その分より深く「病」ではなく「人」にかかわる事ができます。以前よりも、これからも成長するであろう子どもたちの将来を想像しながら働くようになりました。
まだまだ未熟者の私ですが、子どもたちの今に寄り添って、その家族と一緒に健やかな未来を思いながら、医療をしていきたいと思います。