大分大学小児科学講座では、海外・国内留学を行い、幅広い知見をもった医局員育成に積極的に取り組んでいます。
私は、小児科専門医を取得後に、血液腫瘍を専門とすべく、臨床、研究ともに専門施設での研修を行いたいという希望がありました。そこで、井原教授に希望を受け入れて頂き、4年間、九州大学成長発達医学講座において、大学院生として研究、臨床の両面で国内留学させて頂きました。
思い返しますと、あっと言う間の4年間でした。留学を経て、血液専門医、小児血液・がん学会専門医、造血幹細胞移植認定の専門資格を取得することができました。最初の半年間と最後の4か月間は、臨床を中心とした研修をさせて頂きました。九州大学小児科病棟は、血液、免疫、腫瘍性疾患の患者さんが中心の病棟となっており、九州大学の先生方はもちろんのこと、産業医科大学や熊本大学、長崎大学から来られている先生とともに、多くの移植例・難治/再発例を経験させて頂き、九州圏内のネットワークを構築することができたことも自身にとってかけがえのない財産となりました。
研究面では、急性骨髄性白血病とヒストンのメチル化に関する研究を中心テーマとして、大賀正一教授の御指導のもとに、研究生活を送らせて頂きました。DNAやRNA、タンパクの抽出方法など、さまざまな知識、実験手技、技術を丁寧に教えて頂きました。また、他の講座に出向されている先生方からも、講座の垣根を越えて、様々な情報を頂き、ときに手技を指導して頂きました。他のグループの研究に関わらせて頂くこともあり、本当に貴重な研究の機会を与えて頂きました。
私生活においても、大分と九州大学は車で行き来できる環境でしたので、妻子ともに、のびのびと健やかに過ごすことができました。また、これから、入局される先生方に自身の経験を共有させて頂き、同じような環境で、臨床、研究面ともに充実した留学環境を提供できるように、お話しさせて頂ければと思います。
突然の言葉でした。小児科臨床医を9年続け、小児科専門医、小児神経専門医を取得し、これからバリバリ臨床をしよう、
そう思っていた矢先でした。迷いました。臨床は好きでしたし、3歳の娘と妻がいて、結婚式と車のローンがやっと終わったところで、お金もありませんでした。
しかし、妻と娘、3人の大先輩に後押しされ、大分県独自の研修サポートシステムの援助を受け、なんとか世界に飛び出すことができました。
人口5000人弱の田舎町出身の私を、人口250万人の大都会が待っていました。
英語もろくに話せず、大学院にも行ってない私にとって、海外でいきなりの研究生活は苦労の連続でしたが、行ってよかったです。
何がよかったかというと、
・ 臨床につながる研究にどっぷり浸れた
・ 世界とつながれた
・ 世界でがんばっている日本人に出会えた
・ 世界最高峰のてんかん医療を学べた
・ 大分でできることを考えた
・ 我が家が初めて1つになれた
苦労はのど元すぎれば忘れますが、経験は私の財産となって残りました。
留学とはあまり関係ないですが、私の小児科医生活11年を振り返って、結局、今の自分を支えてくれているのは、そのとき、目の前にいらっしゃった方々との繋がりでした。
山口に帰るか、大分に残るか、小児科医になるか、内科医になるか、迷っている私を
さしでお寿司に連れて行ってくれたのが、当時の病棟医の秋吉先生でした。
神経が大嫌いだった私に小児神経の醍醐味を教えてくれて小児神経の道に引きずり込んでくれたのが一番最初のオーベン犬塚先生でした。
神経を志したものの、逃げ出したくなるくらい鍛えに鍛えてくれたのが当時小児科教授の泉先生で、トロントに送り出してくれたのも泉先生でした。
トロントでてんかんモニタリングユニットのチーフ大坪先生に出会いました。
ミミズのような脳波から脳内の神経ネットワークをつむぎ、あぶり出し、そしてそれをぶったぎる、繊細で豪快な先生です。
口癖は”Top Heavy!!”でした。
何でも一番大切なものから初めなさい、言いなさい、書きなさい。
そんな多くの先生方や仲間とともに、現在、大分で小児神経を盛り上げ、世界に発信していける仕事をしようと奮闘中です。
私は今、皆さんの目の前にいます。皆さんの思いや夢を形作ったり、新しい道を一緒に模索したり、そんなお手伝いができればと思っています。
研究留学や臨床留学に興味のあるかたにフレッシュな情報をお伝えすることもできます。
大分でできることはいっぱいありますし、大分でしかできないこともあります。
一緒にできることを考えてみませんか?
インドネシアのジョグジャガルタで行われた、Asian Conference On Fish Models For Diseases に参加しました。この学会は、タイトルからも分かるように、疾患モデル動物として魚を用いた研究をしている人たちが集まる学会です。Asian Conference という名前ではあるものの、参加者はヨーロッパ、北米、シンガポール、中国、オーストラリア、そして日本など、世界各地から出席していました。
私は、初めての国際学会の参加でしたが、まず驚いたのが、参加者のカジュアルさです。
スーツを着ている人はほぼおらず、インドネシアという暑い国だからか、Tシャツに半パンというカジュアルスタイルが主流でした。発表の合間には、コーヒーや軽食などが用意されており、それらを楽しみながら、他の参加者と真面目に研究の話をしたり、雑談をしたりと、とても和やかな雰囲気の楽しい会でした。
私は、大学院で取り組んだゼブラフィッシュを用いた研究についての発表を行いました。ポスター発表を予定していたのですが、ポスターもスライド発表をするという衝撃の事実を直前に知り、準備も出来ていなかったため、とても焦りましたが、海外だと度胸がつくのか、何とか乗り切ることができました。おそらくほぼ英語は伝わっておらず、乗り切ったと思っているのは、私だけかもしれませんが、一応前に立って発表をし(英語で!)、ポスターも貼って、質問に答えたから、自分の中では乗り切れたのだと思っています。
今回、国際学会に参加して得られた貴重な経験の一つが、Fish Models For Diseases研究において世界の第一人者の先生方に直接お会いすることが出来たことです。普段、論文やインターネットなどで拝見していた先生方と話すことが出来て、とても刺激になりました。
会の合間には、一緒に参加したウランさんとインドネシアの観光も出来、とても楽しい学会参加となりました。
食あたりになったり、いきなり発表することになったり、参加者の英語が早すぎて聞き取れなかったり、大変な面もあったけれど、初めての国際学会はとても楽しくて、貴重な経験になりました。
英語を少し勉強して、研究も進めて、また参加したいと思っています。
長きにわたるコロナ禍の行動制限がようやく緩和され、対面での学会参加も行われるようになってきた2023年3月、アルゼンチンのブエノスアイレスにて開催された11th International Meeting of Pediatric Endocrinology(IMPE2023)に参加させていただきました。
自分自身にとっては国際学会への参加は2回目でしたが、海外旅行にそこまで慣れているわけではなく、地球の裏側での学会へ期待3割、不安7割の心境でした。
地球裏側への道のりは、飛行機に乗っている時間だけでも合計24時間かかり、名実ともに長い道のりでした。しかし、いざ参加してみると、日本から多くの先生が参加していて、会場内外で温かくお声掛けいただき、安心感の中で参加することができました。
IMPEは世界中の小児内分泌科医が参加する学会で、南米での開催でもあったためか、北米やヨーロッパからの参加者が多かった印象があります。
小児内分泌学会は日本国内の学会も議論が活発なのが特徴なのですが、IMPEではさらに議論が活発で、質問のマイク前に立っている人だけでなく、座席に座っている人からも「こういうことなんじゃない?」みたいな声が上がっていて、まるでカンファ室でのカンファレンスかのような和気あいあいさがあり、アットホームな印象でした。休憩時間も、スナックやドリンクが用意されている会場で、熱気むんむんで国際交流が行われていました。
今回、自分自身の発表は小児がん経験者の骨格筋量に関する演題で、ポスターセッションでの採択となりました。しかし、コアタイム方式(決められた時間にポスター前に立ち、順次質問を受ける形式)であったため、ポスターの横に立っていても質問を受けることはなく、自分自身がフロアで議論をする機会は得ることができませんでした。自分の英語力への自信のなさも相まって、やはり学会場に行きつくことが目標になってしまって、議論に参加することができず、今後国際学会に参加する機会があったときには、質疑応答をしたりといった、本来の意味での学会参加を目標にしたいと思います。
最後に
国際学会に参加するには、研究の質を高める必要が勿論あります。そして、やはり移動時間を含めると病院を不在にする期間が長くなりますので、自分の学会参加中に大分の小児医療を支え、守ってくださった大分の先輩・後輩の先生方の存在なしには参加することができません。普段の診療・研究をワンチームで取り組んでいくことの大切さを改めて実感しました。
留学先 | 分野 | 医師 |
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University Hospital Leuven | Department of Neonatology | 前田 知己 |
The Hospital for Sick Children, Sick Kids | Division of Neurology | 岡成 和夫 |
Johns Hopkins University | Division of Neuropathology | 宮原 弘明 |
留学先 | 分野 | 医師 |
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東京都立小児総合医療センター | 内分泌代謝科 | 糸永 知代 |
国立成育医療センター | 救急、内分泌 | 久我 修二、穐吉 真之介 |
国立精神・神経医療研究センター | 神経 | 福島 直喜 |
国立病院機構 八雲病院 | 神経 | 秋吉 健介 |
心身障害児総合医療療育センター | 神経 | 松塚 敦子 |
東京小児療育病院 | 神経 | 松田 光展 |
新潟大学 脳研究所病理分野 | 神経病理 | 宮原 弘明 |
久留米大学小児科 | 血液 | 末延 聡一 |
岡山大学 小児神経科 | 血液腫瘍 | 犬塚 幹 |
熊本大学 発生医学研究センター | 血液腫瘍 | 末延 聡一 |
国立病院機構 九州がんセンター | 血液腫瘍 | 秋吉 健介 |
東京大学医科学研究所 細胞移植科 | 血液腫瘍 | 末延 聡一 |
三重大学 小児科 | 血液腫瘍 | 山田 博 |
九州大学小児科 | 血液腫瘍 | 後藤 洋徳 |
国立研究開発法人国立がんセンター中央病院 | 小児腫瘍 | 園田 知子 |
愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部 | 癌 | 垣内 辰雄 |
長野県立こども病院 総合周産母子センター | 新生児 | 関口 和人 |
京都大学 免疫細胞生物学 | 免疫アレルギー | 是松 聖悟、長倉 智和 |
さかきばら記念病院 | 小児循環器 | 武口 真広 |
国立循環器病センター | 循環器 | 山田 克彦 |
東京女子医科大学 心臓病センター | 循環器 | 武口 真広、川野 達也、 園田 幸司 |
福岡市立こども病院腎疾患科 | 腎臓 | 清田 今日子 | 神戸大学 小児科 | 腎臓 | 木村 裕香 |