子どもの頃の話になるんですが、当時は本気でプロサッカー選手になりたいと夢を
持っていた時期もあったんです。
ですが、中学1年生の時に、母が重たい病気にかかってしまいまして。
その際、母は結果的に薬を使って良くなったんですが、そのときに純粋に「医学」
ってすごいなと思ったのがキッカケですね。
卒業前の進路を決める際に、興味を持った医学の道に進もうと決めました。
もともとは私自身がスポーツをしていたこともあって、整形外科医という道もいいかなと思っていた時期があったんですが、
小児科医という道を選択したのは、実習の際に担当したあるお子さんとの出会いがキッカケです。
その子は血液の重い病気を患っていたんですが、移植治療をしてやっと生着が確認されたときに担当をさせてもらったんです。
はじめのうちはなかなかとっつきにくい部分もあったりであまりうちとけられなかったんですが…次第に仲良くなって。
その後実習が終わり、半年くらい経ってその子に会いに遊びに行った際に、亡くなられたということを聞いたんです。
あまりの出来事に、何か自分の中で衝撃的な事が起こったんですよね。
なぜあんなに頑張ってた子が死なないといけないの?という思いが頭を駆け巡り、怒りにも近い感情が生まれてきました。
子どもというのは本当に尊い存在です。
ですが、その子どもたちが色々な病気や事故で非常に大変な状況に陥ってしまっている現実があります。
そんな子どもたちを、自分の手でなんとか助けてあげれればという思いが強くなって、小児科医という道を選択しました。
今は入院している子どもたちでも、元気になったら将来サッカー選手を目指したり、野球選手になったり、
ひょっとしたら私と同じ医師を目指してくれたらなと思う時もあります。
一番苦労したというか、今でも悩むことが多い部分ですが「責任の重さ」ですね。
お子さんの事なのでご両親がとても心配されることが多いですし、
特に重たい病気の際はどのように子どもに伝えたらいいかと悩むことは多いです。
また、できるだけ子どもに苦痛を与えないようにと処置を考えてはいますが、
どうしても治療の中で苦痛を与えてしまうこともあります。
子どものことを思えば思うほど難しいなと感じるときも多々ありますね。
ですが、そんな中、治療が終わり家に帰って行く際に、満面の笑みだったり、
「先生ありがとう」と言ってもらえたり、
別の時に外来で話したりすると「よし!がんばろう!」と勇気をもらえますね。
子どもたちが笑顔になって元気になっていくことに、今はやりがいを感じています。
私が研修医として入ってまだ間もない頃だったんですが、1年半くらい一緒に治療をがんばっていた中学生の子がいたんです。
少しでもしんどい治療が楽になればという思いから、当時流行りのギャグを覚えては披露するということを繰り返してたんですけど、
全然笑ってくれなかったんです。(お母さんは気を使って笑ってくれてましたけどね 笑)
その後、別の病院に移ることになったんですが、結局最後の最後まで全く笑ってくれなかったんですよね~。
ですが後日、その子が手紙をくれて、「実は心の中では笑ってました」とメッセージをくれたこと。
それは気を使ってくれていたのかもしれないけれど、すごくうれしかったですね。
私の場合は「医師」という仕事を選択するにあたり、自分の人生の中で大きなイベントがあったというわけではないんですよね。
学生時代に「この職業につきたい!」という大きな目標などもなくて、とにかく今できる勉強はしておこう!という思いで毎日を過ごしていました。そんなときに、
周囲から「大分大学医学部を受けてみたら?」と薦められたのがキッカケです。
母の影響かもしれませんが、仕事をする後ろ姿を見てきて、ずっと長く続けていける仕事をしたいなという憧れはありましたし、いつかは地元に貢献できる職につきたい、誰かに必要とされる仕事がいいなという想いもありました。
そのような想いが「医師」という仕事を目指す後押しになっていたのかなと振り返ってみると思うときはありますね。
そうですね。
研修医の時にいろいろな科をまわって、患者さん、先生たちと触れ合う機会を多く得ることができました。
どの科も魅力的だったんですが、小児科で働かせてもらった時に、子どもの素直さや元気になった時の笑顔に惹かれて、
小児科医を選択しようと決意しましたね。
大人を診るのとは違い、採血一つするのも大変なんですが、退院の際に元気になって大きく手を振りながら「先生バイバーイ」と笑顔で言ってくれる時の嬉しさは、小児科でしか味わえないのかなと思います。
それからもう1つ大きな理由があってですね。
それは小児科で働いている先生方がとても魅力的だったんです(お世辞ではないですよ。笑)
小児科というのはとても幅広い知識を求められる科なんですが、その知識と経験を兼ね備え、それを丁寧に教えてくれる先生たちを医師として本当にかっこいいと思ったんです。
いつかは私もここで働きたい!この科のメンバーになりたいと思ったのも大きなキッカケでした。
(結構周りの環境に左右される性格なので、良い環境に身を置きたかったという理由もありますが…)
どのような仕事も同じだとは思いますが最初の3年間は右も左も分からずきついこともあるのかなと思ってます。いろいろありすぎて何から伝えて良いかはわかりませんが、前向きな性格なのでコミュニケーションに関しては苦労はしていないですね。笑
ただ、苦労というよりも不安を感じる部分はあります。
お子さんの担当になった際に、その子のお母さんに対しての説明や、どういったプロセスで治療を行い退院させて、どのようにフォローをしていくかなど、ひとつひとつのことに対してまだまだ経験がないため不安を感じることはあります。
でもこればかりは時間と経験、コツコツ勉強しながら自信をつけていくしかないと思っています。
NICUを中心に仕事をしているんですが、入局したての頃というのは点滴をすることもできなかったんです。
最近はだいぶ慣れてきて仕事の幅も増えてきたんですが、ある当直の時にひとりの患者さんを任された事がありました。
担当の先生も別の患者さんの対応で忙しく、担当を任されたんですが、その患者さんの治療が一からすべてうまくいったんですよ。任されるということも嬉しかったですし、私自身のひとつめの成功体験ができたことはすごく嬉しかったですね。
研修医の時に小児科に関係なく地域医療を地元で経験する機会があったんですが、それまでは地元の医療がどのようになっているか全然知らず…それまでは地元は高齢者が多いし、医師も高齢化してるのではと勝手に思い込んでたんです。ですが実際は40代くらいの先生や、私の後輩の看護師さんがすごく頑張っていたんですよ。知り合いが頑張ってると本当うれしくなりますよね!
そんな姿を見て、私もしっかりと今できることをやって経験を積まないといけないなと改めて思いましたし、
いつかはこの人達と一緒に働けたらなと思うようになりました。
何年後になるかはわかりませんが、将来は地元の竹田市に戻って、地域医療に貢献できる医師になりたいと思っています。