実は、20代後半まで医療とは関係のない仕事をしていました。大学ではフランス語とアフリカ政治学を学び、IT系の企業に就職して会社員をしていたんです。どうして医師を目指すことになったのかと言うと、社会人になって里帰りしたときに、昔お世話になっていた地元の病院の院長先生から「医者になってみたらどうか」と言われたのがきっかけなんです。それからひたすら勉強に打ち込んで大分大学に編入し、医師になりました。
他の先生方に比べると、ずいぶん遅いスタートですよね。自分でも不思議な気持ちです。
子どものころから、「恵まれない子どもたちに愛の手を」というCMを繰り返し見ていた影響で、「生まれた地域や環境が違うだけで、どうしてこんなに不公平なんだろう」という気持ちを持っていました。そこから子どもや社会的弱者への福祉に関心を寄せており、IT系の企業に就職したのも、途上国の教育インフラに関わりたいという気持ちからなんです。
そして、医師としてどの道に進むかを考えたとき、「子どもたちの役に立ちたい」という私の根本にある想いから、小児科を選びました。
他の先生方に比べてスタートが遅い分、体力がなかったり、劣っている部分があると感じているので、ずっとがんばっていかないといけない。あのとき、ああすればよかった、こうすればよかったと、反省と勉強の毎日ですね。
ただ、「この間できなかったことが今はできるようになった!」と感じる瞬間もあります。そういう積み重ねは嬉しいですね。
あとは、長い治療を終えた子どもたちが、ご家族と一緒に家に戻っていくのを見ると「よかったな」と思います。
家と病院で分かれていた家族が、やっとひとつの場所に戻れるんだと、ちょっとうるっとします。
今は目の前にあることをこなすだけで精一杯。
とにかく勉強、研鑽の日々で、将来的にどうなりたいかを考える域に至っていないと思っています。
ただ、「必要とされたときに、全力で応えられる技術と知識を持った医師でありたい」という気持ちで日々の仕事に励んでいます。
例えば私は杵築出身なんですが、「地元で医師が足りない。帰って来ないか?」と言われたときに、「はい!やらせていただきます!」と自信を持って返事ができる医師でいたいですね。