小児科医としてはこれからなので、苦労といえるほどの経験はまだないんですが、小児科は忙しくて大変というイメージが元々ありました。それはやっぱりその通りです。
ただ、他の科ももちろん忙しいですし、やるべきことは同じだと思うので、小児科ならではの大変さや苦労を実感していくのはこれからだと思っています。
嬉しかったことといえば、脳外科で研修していたときに診ていた小児の患者さんが、退院後に再会したとき声をかけてくれたことがありました。
僕の顔を覚えてくれていたことも、退院後の元気な様子を見られたことも嬉しかったです。
自分の向かう方向性は、実はまだはっきり決められていません。やってみたいこともとても多いので、「これに絞る!」といえるほどの要素がまだ見つかっていないのかもしれません。
僕は、患者さんや知り合いなんかに何かを訊かれたときに、答えられない自分が一番嫌だと思ったんです。どんなことでも、最低限の知識は持って応えていきたい。幅広く、いろんなことを吸収していきたいですね。
小児科ってなんでもやれる、やらなきゃいけない科でもあります。小児科医になる人は、子どもが好きな人や、元々小児科医を目指していた人じゃなくてもいいと思うんです。
僕みたいに「いろんなことをやりたい、知りたい」という人のほうが、小児科医として働いていくうちに何かを見つけられるんじゃないでしょうか。
医師、そして小児科医という職業を志したきっかけは
何だったんですか?
母親が医師だったので、子どものころから医師という職業をぼんやりと意識はしていました。僕は最初から小児科医を目指していたわけではないんです。研修で回ったどの科も楽しくて、どこも魅力的だと感じていたので悩んでいたんです。
小児科医になろうという気持ちが生まれたのは、処置を終えて眠っている患者さんをベッドに移すために抱きかかえた瞬間でした。腕にその子の体重を感じたとき、「子どもって意外と重たいんだ!」と驚いてしまったんです。
それまで子どもを抱きかかえたこともなく、自分にとって「体重」は、薬や点滴の用量調節に使うための数字でしかありませんでした。
ありふれた数字がひとりの人間の重さだということ、そしてこの数字は患者さんごとに全部違っていて、言わば命の重みだということを実感しました。 僕にとって、向き合うべき命のことを教えてくれたのが、小児科でした。