実は、子どものころは警察官になりたかったんです。
僕は「踊る大捜査線」が大好きで、青島刑事の全力投球の熱さと、和久さんが縁の下の力持ちさながら影で色々努力しているところに憧れました。
とにかく人を助ける仕事がしたくて、救命救急士や消防士もいいなと思っていました。
悲しいことに中学生のときに身長が伸びず、体格的に警察官には向いていないかもしれないと思っていた時期に、母親から「医師も人を助けられるよ」と言われたんです。
それが、自分の中で医師という選択肢が生まれた瞬間でしたね。
父が小児科医だったので、自分にとって医師という仕事はとても身近なものでした。
父はとても忙しい人で、直接仕事の話をされたことは、そんなに多くはありませんでした。
ただ、父が誇りを持って仕事をしていることは子どものころから理解していましたし、尊敬もしていました。医師を目指すと同時に、自然と父のような小児科医になりたいと思うようになっていきました。
実際に医師になった当初は、小児科専門ではなく『ゆりかごから墓場まで』診療することを目指して『総合診療科』として地域で勤務していました。小児科を含めた地域医療に携わる中で、地域を力強く支える熱意ある小児科の先生方を目にして、最終的に小児科医になると決めました。
経験が浅いうちは、ご家族へのコミュニケーションに苦労しました。
親御さんはお子さんをとにかく心配しているので、医師が「それくらいの症状だったら大丈夫ですよ」といっても不安が残ることもあります。
診察するのはお子さんだけど、お話するのは親御さん。安心して親御さんに帰っていただくためにも、総合的な医学知識に加えてお子さんと親御さんを理解する心が必要と思います。
病院以外の場所で患者さんやご家族に声をかけてもらえることも嬉しいですが、やっぱり一番嬉しいのは、命が危ない病気や治療にかかわって、患者さんが元気になった姿を見たときですね。
「この子の人生を実りのあるものにできた」という気持ちになります。感動と充実感があります。
地域医療をしていきたいという想いが強いので、「信頼されるかかりつけ医」を目指しています。
父が地域医療をしていたので、自分のなりたい医師像は自然と地域医療というスタンスに傾いていきました。
その地域の開業医という意味ではなく、地域にないと困るものを助けていけるような医療を行いたいと考えています。
最初に僕に小児科を教えてくれた先生がしていたことなんですが、例えば保健師さんの会とつながりを作って子育て講演をしたり、公衆衛生、病児保育など地域に足りないことに積極的に関わっていきたいですね。
医療と保健と福祉で地域に関わり、寄り添っていけるかかりつけ医を目指していきたいと思っています。