私が小児科医を志すことになった一番の理由は、5歳のときに、弟を乳幼児突然死症候群で亡くしたことです。子どものころの記憶ってあまり覚えていないんですが、弟が保育園で人工呼吸や心臓マッサージを受けていた光景と、ただ泣くことしかできなかった自分を、今でも鮮明に覚えています。
受験勉強の最中に、「医師は諦めたほうがいいのかな」という気持ちになったことがあります。でも、自分が成長していくにつれて、弟の死という出来事だけではなく、両親のことを考えるようにもなっていました。弟の死を見届けた父と母はどんな気持ちだっただろう、どんなに辛かっただろうって。
そう思ったら、「子どもたちを助けられる医師になりたい」という想いはどんどん強くなって、諦めることはできませんでしたね。
患者さんが笑ってくれると、すごく嬉しいです。
子どもたちにとってお医者さんは、痛いこと怖いことをする存在なので、怖がられてしまうことが多いんです。だから、どうやったら痛みや怖さをやわらげてあげられるか?ということは常に考えていますね。
研修医になりたてのときに、なかなか心を開いてくれない患者さんに出会ったことがありました。接し方に悩んでいると、先輩の先生に「病気のせいでこの子は心を閉ざしてしまっている。小児科医はそういうところを診てあげないといけない」と言われて、はっとしました。
同じ病室の中で、患者さん同士が仲良く話している姿を見たり、互いに打ち解けられるきっかけを作れたときも嬉しいですね。
弟のこともあって、救急やNICUには強く惹かれていますが、専門はまだ決まっていません。どの分野も楽しくて、やりがいがあると感じています。
ただ、「子どもたちが笑顔でいられるための手助けをしていきたい」という想いはずっと抱いています。
小学生の患者さんが、病室でひとりで勉強している姿をはじめて見たとき、衝撃を受けたんです。
健康なら、教室でともだちと一緒に勉強ができるのに、と。この子はどうやったらふつうの生活を送れるようになるだろう。
なんとかしてあげたい、してあげなきゃいけないと、心から思いました。
辛い思いをしてがんばっている患者さんやご家族が少しでも笑顔になれるように、私自身も笑顔いっぱいで努力していきたいと思っています。