私が幼い頃に病気がちだったこと、双子の兄に障害があることで、昔から医師や病院が身近な存在でした。小学生くらいから医学の道に興味があり、自然と医師を目指すようになったと言えます。
小児科を選んだのは、自身のモチベーションを高く維持できると思ったからです。救急医療にも興味がありましたが、小児科なら初心を忘れることなく一生続けられると思って選びました。
純粋に子どもが好きだということも、小児科を選んだ理由のひとつです。患者さんの警戒心を解くために常に笑顔で接し、許される範囲でスキンシップをとることを心がけています。手を握ったり頭をなでたりして患者さんとの距離が縮められると、医療にもよい影響があります。患者さんの素の状態をしっかり把握しておけば、些細な変化でも敏感に感じ取ることができるからです。
小児科の大変さは、意思疎通が大人のようにはいかないという点です。患者さん本人とのコミュニケーションはもちろんですが、医療スタッフ間の伝達も難しいと感じます。通常は大まかな指示で事足りるシーンでも、小児科の患者さんの場合は薬や点滴の量、速度などを厳密に管理しなければいけません。実際に働いて大変さを実感するとともに、身の引き締まる思いでいます。
当医局に入局して、さっそくうれしいエピソードが生まれました。入院中に夏休みを迎えた患者さんが、病院内での出来事を自由研究の題材に選んでくれたのです。自分の体に興味を持ってたくさん質問してくれ、私と一緒に撮った写真と共に素晴らしい作品に仕上げてくれました。病気をマイナスととらえずに自由研究に昇華させたことに感動を覚えましたし、医師の仕事に興味を持ってくれたことをうれしく思います。
ずっと大分で育ったので、漠然と地元に貢献したいと思っていましたが、実際働いてみてその思いはますます強くなりました。大分には小児科が少なく、夜間診療に対応できる病院も少ないのが現状です。親御さんの話を聞いて、不安な気持ちを肌で感じました。
患者さんがしっかり病気を治して、元気に退院していく親子の姿を見るのが小児科の醍醐味だと思っています。その笑顔を糧に、患者さんと親御さんの不安を取り除けるような小児科医になり、大分の小児医療を支えていきたいです。